フィヴェの日記

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読書感想|「5分後に不思議の国のラスト」-20230902読了

 今回は「5分後に不思議の国のラスト」の感想を書きます。

 

・基本情報

題名:5分後に不思議の国のラスト

編:エブリスタ 発行:2020年10月30日 発行所:河出書房新社

 

 

・簡単なあらすじ

 収録された九篇の短編はどれも、五分で読み切れる! たった五分間だけ、あなたを不思議の国へご招待!

 

 

・感想

 題名に「不思議の国」と入っているので、「不思議の国のアリス」のような世界観の短編が収録されているのだと思って読み始めました。ところが、その予想は裏切られます。この本の題名の表すところでは、「不思議の国」というのはファンタジーの世界を指していたのです。勇者や魔法が登場する世界が多いように感じました。

 この本は振り仮名が多く、どちらかというと児童向け作品であると思っていました。しかし、第一篇は意外とグロい描写があり、驚きました。題名である「手に残りしは青」が、ラストでやっと意味が分かり、切ない気持ちになりました。

 第二篇はよくあるRPGの展開を逆手に取ったような作品でした。短編だからこその先の読めない感覚が楽しかったです。主人公の自分の主義を最後まで変えない、貫く姿勢がカッコ良いと思いました。

 第三篇は、短編ならではの全てが最後まで露わにならないところが、自分の中で真相や続きを考えることができて面白いと思いました。友愛が副テーマのように感じられ、このような展開があるのかと思いました。

 第四篇「『夢中幻想記』奇譚」は、この本の中で一番のお気に入りの篇です。描写が細かく、秀麗で、世界観がとても素敵だと思います。推理小説のような一面もあり、情景や結末を考えながら読むことが楽しかった篇です。

 第五篇は、心温まる話でした。冒険譚のその後といった感じで、平和になった世界でのお話でした。気の置けない友人であるからこその軽口が、読んでいて心地よかったです。

 第六篇は第二篇に似ています。第二篇の続きのような感じに思いましたが、読み進めるうちに別の世界であることが確かに分かりました。ご都合主義的な世界ですが、登場人物が優しい界と思えます。登場人物が生き生きとして、情景が目に浮かぶようでした。

 第七篇は、読んでいてもどかしい思いでした。主人公のやること成すことが、上手くいかない様が苦しく、ハッピーエンドが見たくて自然とページを捲る手が速くなりました。

 第八篇は、よくある勧善懲悪の話にスパイスが効いていて、面白かったです。この本の中で一番ファンタジー要素が強い話なように感じました。

 第九篇は、現実世界に近いファンタジーでした。大人びた主人公から見る世界は危険に満ちていました。それでも、仲間への視線は柔らかく、思春期特有の仲間意識の強さを感じました。